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製造業のIE手法等を用いて、問題点を明確化し、IT利活用の見直しも含めてECRS視点から作業効率化を図る。
N県人気温泉地の旅館Tでは、インバウンドを中心に顧客が増加しているにも関わらず、地方の人口減少に伴う人材不足や人件費の高騰に悩まされていた。追い打ちをかけるように、依頼していた清掃業務委託会社も人員確保ができず、日によっては客室の準備が間に合わずお客様をお迎えできないなど危機的状況に陥ることもあり、清掃業務を中心とした各種作業の効率化と省人化に迫られていた。
実地調査ではまず、客室清掃業務全般の作業の流れを確認した。同時に作業者の観察及びヒアリングを実施することで、作業員は手際が良く無駄な作業をしているわけではないということが判明した。しかし、無理無駄ムラがあるのではないかということで不稼働原因をしつこく探った。そこで、製造業のIE手法である、ワークサンプリングによるさらなる深堀調査を実施した。
調査の結果、このT旅館では客室作りに直接関わる主作業よりも、直接的に作用しない付随作業(運搬歩行がほとんど)の割合が50%超で最も大きく、運搬歩行削減の課題が明確となった。
歩行運搬が多い原因として、T旅館では清掃工程毎の流れ作業となっており、役割分担を徹底していた。このため、客室間の移動や運搬が異常なほど増加していた。製造業でも歩行運搬は課題であり、これを削減するためのメソッドとして、個別生産方式がある。
そこで、この製造業の個別生産方式を客室清掃作業へと応用して、「1室毎完結清掃」を導入した。
これまでは、1室清掃時間は43分。1室毎完結清掃を導入し検証した結果30分へと短縮、1室あたり13分の業務削減となった。
T旅館は全30室であり、清掃時間13分短縮により月10,000分の省人化が可能となった。
他でも旅館業のHや、客室面積が大きいKホテル、Mホテルなどにおいても、同手法を取り入れたことにより、高い業務削減効果が出ている。効果として、導入後1年で売上対人件費率でも30%から27%まで減少しており、人件費単価が向上しているにもかかわらず1室毎完結清掃の高い即効性を示している。
1室毎の清掃を完結することで担当客室もして責任も明確にもなる。このため、導入の付随効果として、各人への評価及び指導の確実性が向上するとともに、客室の清掃品質が向上し、リピーター増加にもつながった。まさに従業員満足度向上が顧客満足度向上に直結(ES向上→CS向上)した好例となっている。